のれんの奥に文化あり

2013年7月30日 更新

(一橋大大学院 宿題「1人居酒屋」)
1人で居酒屋に行く・・・。
これが一橋大学の大学院の宿題だ。赤ちょうちんを都市の文化空間とみなした、れっきとしたフィールドワーク。学生たちにとっては、異文化との出逢いの場でもある。

6月下旬の日中、東京都昭島市。同大学院修士課程1年の松山彩音さん(23)は、西武拝島線拝島駅前で居酒屋を探していた。殺風景なビルの1階で赤ちょうちんを発見。引き戸のガラス戸越しに、カウンターで飲む人たちの声が聞こえた。近隣の店より際立って地味な店構えだ。

「常連客ばかりに違いない。ここにしよう」

そう心に決めたが、居酒屋に1人で入るのは初めて。20分程店の前をうろうろした末、思い切ってのれんをくぐった。

「自分の感覚を頼りに探した飲食店に1人で行くこと。ただし、チェーン店はダメ」

それが社会学の授業で出された課題だ。4月以降、居酒屋が都会人に欠かせない「居場所」になっていることを文献などで学んできた。フィールドワークは、その仕上げとなる。

 

(ひとつの社会)
油染みのある天井、むき出しの喚起ダクト。飾り気の無い店内で、初老の男性客たちが迎えてくれた。いずれも地元の住民だった。
ふだん行く居酒屋は、チェーン店ばかり。見知らぬ人と交わることは、まずはない。

「居酒屋はひとつのコミュニテイーなんだと腑に落ちた。対話力を鍛える絶好の場ですね」

店は発見の連続だった。夜の客は滞在時間が短い。電車の本数が少なく、仕事帰りの乗り換え客が時間潰しに使っているようだ。店の壁にかかる時計が5分進んでいるのは、お客が電車に乗り遅れない為の気配りでは。ホッピーのアルコールが濃いのは、短時間で酔えるようにとの配慮では。考察が深まる。

昼の客は長居するという。後で調べたら、周辺に高齢者向けの公共施設が少ない。家族以外の人と関わる場を求めて集まっているのでは。松山さんはデータを交えて分析し、7月の授業で発表した。

この授業は9人が受講。
焼き鳥屋で隣のおじさんに声をかけて無視されたり、地元の人が多い立ち飲み屋で居心地の悪い思いをしたり。それぞれの体験を元にリポートをまとめた。

ありふれた日常の中にも、感覚を研ぎ澄ませて観察すれば、面白さが見える。
そんな経験を積み、自分たちの住む町の奥深さを知って欲しいと、数年前から「1人居酒屋」の課題を出すようになった。
ネットが普及し、似た者同士でしか関わらない傾向が強まる今こそ、他者と関わって欲しいと思う。

「異文化を通してこそ、自分を知り、社会を知ることができるはずです」

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