2020年開催の東京五輪も決まり、新しい日本を世界に売り込もうと、官民挙げて大忙しである。
それはそれで大変結構なことで、大いに推進したらよい。
まさに、日本経済は帆に順風をはらんで快進撃を続けているかに見える。
しかし、ここは一番、大いに気を引き締める時だ。
「勝って兜の緒を締めよ」と言うが、一部の人たちの得意然とした顔を見ると、どうも緒は緩みっぱなしで、いささか心配である。
松下幸之助翁は、事業が好調な時ほど厳しかった。
ある時、経理部長が幸之助翁に
「今期の決算は大変好調で、最高の利益を上げることができ、現金も5兆円ほどたまりました」
と報告したところ、褒められるどころか、冷たい顔で、
「君、それを見たのかね?」と言われたという。
経理部長は「一体どういう意味なのか」と困惑したそうだ。
はたせるかな、その数年後、天下太平の世は破れて、大不況時代に突入したのである。
経済の活況、大変結構である。
大いに羽を伸ばす、も結構。
しかし、その底にあるものを冷徹に見つめる客観的な視野が必要であろう。
幸之助翁はこう言ったという。
「景気が悪いときはみんながよく分かっていて、おのおの必死に努めるから何も言うことはない。しかし、好況時にはみんな『それいけ、やれいけ』と我先に走る。それをどう、制御するか、というのが経営というものだ。残念なことに、世上の経営は、その逆をやっているように私には見える」と。
言われてみればその通りで、政治経済ともに「最も良い時が最も危ない」と考えるべきなのであろう。
・・・なるほどデスネ。
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